「一たび鳴かば人を驚かさん」・中国の物語

皆さんこんにちは、「songyun.org中国語教室」というコーナーを始めました。このコーナーでは中国に関する知識や中国語の勉強方法などをご紹介いたしますので、このウェーブサイトを有効にご利用していただき、この中国語教室が皆様のお役にたちますように心より願っています。

私も日々日本語と英語を勉強していきたいと思っておりますので、今後とも、よろしくお願いいたします。

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 紀元前9世紀から5世紀にかけては、中国の戦国時代である。この時期の諸侯国は数十にものぼり、生き残るために、正しく効果的な内外政策を実施することが各国では重要となってくる。そこで国王に策を献ずることを専門にした策士という階級が生まれた。これら策士たちは、それぞれ哲学的思想や国を治める道理を持ち、意味の深い活き活きとした例を用いて摂政者を説得し、摂政者にその策を喜んで受け入れさせること得意としていた。

 この「一たび鳴かば人を驚かさん」という故事も、策士の淳于昆が国王に自分の策を受け入れさせた例である。

 斉の威王は即位して間もない国王であった。彼は太子のころから、賢く才能があり、文武両方の知識を懸命に勉強したほか、治国の政略をも研究し、自分の即位後に斉の国を強大にしようという志があった。しかし実際に即位してみると、国王の権威と国王になってからの楽しみは太子のときより遥かに大きいことが分かった。かれは毎日大臣たちにおだてられ、後宮に帰れば最高級の酒食をむさぼり美女に囲まれたので、彼の太子時代からの雄大なる志は徐々に消えていた。

 そしてあっという間に二年以上が過ぎたが、威王は依然として毎日酒と女におぼれ、国の政事などすべて大臣たちに任せっぱなしであった。そのせいで、政事は軌道を遠く離れ、官吏たちは腐敗し、国もどんどん弱まり、多くの隣国が機会を狙って斉への侵攻を企み、誠実な官吏や百姓たちは非常に不安であったが、威王を怒らせては自分に災いが及ぶことを恐れて、大臣たちは、王を諫めなかった。

 淳于昆という策士がいた。彼は弁舌の才があり、言葉づかいも巧みで、よく興味深い隠語で人と弁論していた。威王もよく隠語を用いて己の知恵を表すことを知った淳于昆は、威王を諫める機会をまった。

   ある日、彼は威王に謁見する際、「王さま、私はあなたさまに謎々を解いていただきたいのです」ときりだした。そこで威王が「どんなものだ?」聞いたので淳于昆は「ある国に大きな大鳥がいて、宮廷に住み、もう三年も経つのに、その鳥は羽を広げて飛ぼうともせずに、声を出して鳴こうともせず、ただ目的もなく丸く縮まっているばかりでした。それはどんな鳥なのか王には分かりますか?」と聞き出した。これを聞いて威王は、自分が王として無為に日々を過ごしていることを淳于昆は風刺していると悟ったが、どうやって答えてよいものか迷った。しばらく考え込んだ威王は、「お前は知らないだろうが、その大鳥は、飛ばなければそれまでだが、一たび飛ぶと必ず高く空を飛ぶであろう。また、鳴かなければそれまでだが、一たび鳴けば必ず人々を驚かせるであろう。お前はただ見守っていればよい」と淳于昆に答えた。

 それからというもの、斉の威王は自分の過ちをしっかり自覚し、それを改め奮起して世間を驚かせるようなことをしようと決心した。まず彼は国政を整頓し、全国の官吏を招いて職に尽くす官吏を励まし、腐敗や無能な官吏を厳しく懲罰し、また軍事力を整頓して武力を強化させた。こうして斉の国は全面的に生まれ変わり、至るところで活気に溢れるようになったので、これまで斉の国を侵略しようと企んでいた国々もこれには驚きを隠せず、斉の威王は大鳥のように「鳴かなければそればでだが、一たび鳴けば人を驚かす」とこもごも称えたという。

 のちに、「一たび鳴かば人を驚かさん」という言葉は成語となり、才能のある人が、その才能を一旦発揮すると、他人を驚かせるようなことを成し遂げることを喩えた。

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